十干とは?古代のシンボルをわかりやすく解き明かします

はじめに
前の記事では、四柱推命の思想的背景となっている考え方、陰陽五行説について解説しました。この記事では、陰陽五行説とともに重要な「十干」(じっかん)について解説します。
十干を端的に言うと、自然や宇宙のリズムを表す記号のセットです。四柱推命は、十干と十二支(十二支については別の記事で詳しく解説します)の仕組みを土台にして成り立っています。一見難しそうですが、決してそんなことはありません。気軽に学んでいきましょう!
目次
十干とは?

十干(じっかん)は、古代中国から伝わる10種類のシンボルです。それぞれの干(かん)は漢字一文字で表され、時間や方位、人間の性質など、様々な意味を表すために用いられています。
具体的には、以下の表に示す10種類の干があります。それぞれの干には、陰陽と五行が割り当てられ、特有のイメージが結びつけられています。例えば、甲は陽の木で、樹木のイメージが結び付けられています。
十干 | 陰陽五行 | イメージ |
---|---|---|
甲(きのえ) | 陽・木 | 樹木 |
乙(きのと) | 陰・木 | 草花 |
丙(ひのえ) | 陽・火 | 太陽 |
丁(ひのと) | 陰・火 | 小さな炎 |
戊(つちのえ) | 陽・土 | 山 |
己(つちのと) | 陰・土 | 大地・田畑 |
庚(かのえ) | 陽・金 | 刀・岩 |
辛(かのと) | 陰・金 | 宝石 |
壬(みずのえ) | 陽・水 | 海・川 |
癸(みずのと) | 陰・水 | 雨・雪 |
十干の読み方
十干の読み方について、簡単に説明します。例えば「甲」は「きのえ」と読みますが、これは「木の兄」という意味です。同様に「乙」は「きのと」で、「木の弟」という意味です。
「え」は兄の古い読み方、「と」は弟の古い読み方です。陽を兄、陰を弟と表しているんですね。
甲乙以外も、同じ読み方で読むことができます。ただし庚と申は「かねのえ」「かねのと」とは読まず、「かのえ」「かのと」と読みます。その点だけ注意してくださいね。
十干の起源と歴史
十干は、3000年以上前の古代中国で生まれたとされています。最初は農業で種まきや収穫の時期を決めたり、気候のパターンを把握するのに用いられたという説が有力です。実際に、十干を表す漢字(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)には、種蒔きから収穫までを表す漢字が採用されています。
十干が示す一巡りの時間の質は、種蒔きから収穫に至る流れに対応するものとされた。そのために、その流れを象徴する10個の漢字が選ばれて、個々の十干の名称とされた。(武光誠「日本人にとって干支とは何か」より引用)

さらに、十干は人の性格や運命を示すシンボルとしても採用され、四柱推命や紫微斗数などの占いで、重要な役割を果たすようになりました。別の記事で詳しく述べますが、四柱推命では人の生年月日と時刻を、十干(天干)と十二支(地支)から成る4つの柱で表します。
十干と陰陽五行説
十干は陰陽五行説と深く結びついています。上の表で見たように、それぞれの干は特定の五行が割り当てられ、陰か陽のいずれかを表していましたね。
十干と陰陽五行説のどちらが先に成立したかについては、わかっていない部分もありますが、自然界を理解するための哲学として陰陽五行説が先に生まれ、それに基づいて十干が発展したと考えられています。
十干と陰陽五行説の考え方は、時間が経つにつれ、中国の文化、医学、占星術など、多くの分野に影響を与えるようになりました。この考え方は中国から周辺のアジア諸国にも広まり、それぞれの文化で独自の形を取りながら発展してきました。
十干と十二支の関係
十干と十二支は、古代中国で生まれた異なる系統のシンボルです。どちらかというと十干よりも、動物でお馴染みの十二支の方が親しみがあるのではないでしょうか?十二支では12種類のシンボルを使って、様々な事象を表します。
十干と十二支は単独で用いられることもありますが、二つが合体して「干支」(えと・かんし)と呼ばれる形で用いられることが多いです。干支には60種類があり、六十干支とも呼ばれています。
干支は、主に年・月・日などの時間を表すのに用いられます。たとえば、最初の年は「甲子」で始まり、次の年は「乙丑」というように進んでいきます。60種類の干支が全て循環すると次のサイクルに入り、以下延々と続いていきます。
生活に溶け込む十干
十干は、さまざまな形で現代日本の日常生活にも溶け込んでいます。以下に、具体的な例を挙げてみました。
暦(カレンダー)
日常生活で十干が最も浸透しているのは暦(カレンダー)です。十干は十二支と組み合わされ、年月日を表します。例えば、2024年は甲午の年として表されます。
占い
東洋占術では、個人の運勢を占うために干支(十干と十二支)が用いられます。四柱推命や紫微斗数では、誕生日からその人の干支を導き出します。
契約書
十干を用いた表現は、契約書などの公的な文書で用いられています。契約書では「甲」や「乙」などの表現で、序列や関係性を明確に示します。

名称や記念日
日本では、個人名や店舗名、商品名のような名称、もしくは結婚記念日のような特別な日を表すのに、十干や十二支を用いることがあります。
風水・建築
風水や建築において、建物の方向や配置を決める際に、十干と十二支が参考にされることがあります。

伝統文化や芸術
茶道、華道、歌舞伎などの伝統文化や芸術において、十干や十二支をモチーフにした作品が存在します。
十干同士のペア「干合」とは?
四柱推命には、特定の干同士がペアを作る「干合」(かんごう)という理論があります。
具体的には、以下の表にあるぺアが隣り合うと、干合が成立します。これらは皆、陽干(陽の干)と陰干(陰の干)のペアになっています。
干合するペア | 化す五行 |
---|---|
甲・己 | 土 |
庚・乙 | 金 |
丙・辛 | 水 |
壬・丁 | 木 |
戊・癸 | 火 |
よく見てみると、陽干が陰干が剋する関係になっていますね。例えば、甲(木の陽)は己(土の陰)を剋します。このように、どちらかが一方を剋する関係というのが干合の本質です。
また、干合すると別の新しい五行に「化す」、つまり変化することがあります。
例えば、庚と乙が干合すると金に変化します。一方、丙と辛が干合すると水に変化してしまうように、元の五行とは全く違う五行に変化してしまうペアもあります。
ただ、隣り合っていれば必ず化すわけではありません。どういう条件で化すのかについては四柱推命の流派によって説が異なり、これといった明確な定義はありません。
まとめ
この記事では、十干について解説してきました。十二支とともに、四柱推命の土台をなす考え方です。十干が日常生活にも溶け込んでいる、身近な存在だということも紹介しました。十干について少しでも理解を深めていただけたら嬉しいです。